女の構図

2013 年 5 月 22 日

キャバレエ十番館の裏は、西木屋町に面し、高瀬川が流れた。

 高瀬川は溝のように細い。が、さすがに川風はあり、ふと忍びよる秋のけはいを、枝垂れた柳の葉先へ吹き送って、街燈の暈のまわりに夜が更けた。
 しかし、十番館のホールではまだ夏の宵だった。
 裳裾のようにパッとひらいた頽廃の夜が、葉鶏頭の花にも似た強烈な色彩に揺れて、イヴニングドレスの背中をくりぬいて見せた白い素肌が、蛇のようにくねると、そのくぼみに汗が汗ばみ、女の体臭を男の体臭が絞り出すような夏の夜の踊りに、体の固い若いダンサーのステップもいつか粘るのだった……。
 そんなホールの中へ、こおろぎが一匹、何にあこがれたのか、さまよい込んで、ピョンとはねた途端、クイックターンのダンスシューズの先に蹴られて、チリチリと哀れな鳴き声のまま、息絶えたが、その声はバンドの騒音に消されて、たれも気がつかなかった。
調布市 歯科 打たぬ鐘は鳴らぬ

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