そして梵天丸という幼名はこれに因りて与えられた。

梵天は此世の統治者で、二生の人たる嬰児の将来は、其の前生の唱名不退の大功徳によって梵天の如くにあるべしという意からの事だ。満海の生れ代りということを保証するのは御免蒙りたいが、梵天丸という幼名だったことは虚誕では無く、又其名が梵天帝釈に擬した祝福の意であったろう事も想察される。思うに伊達家の先人には陸奥介行宗の諡が念海、大膳太夫持宗が天海などと海の字の付く人が多かったから、満海の談も何か夫等から出た語り歪めではあるまいか。都べての奇異な談は大概浅人妄人無学者好奇者が何か一寸した事を語り歪めるから起るもので、語り歪めの大好物な人は現在そこらに沢山転がっている至ってお廉いしろ物であるから、奇異な談は出来傍題だ。何はあれ梵天丸で育ち、梵天丸で育てられ、片倉小十郎の如き傑物に属望されて人となった政宗は立派な一大怪物だ。
有明 歯医者 情けの酒より酒屋の酒

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