道学先生、堪りかねて

2012 年 5 月 31 日

 道学先生、堪りかねて、手を握り、膝を揺って、
「では、御両親はじめ、御縁女にも、御得心下されましたれば、直ぐ結納と申すような御相談はいかがなものでごわりましょうか。善は急げでごわりまするで。」と講義の外の格言を提出した。
「先生、そこですよ。」と灰吹に、ずいと突込む。
「成程、就きまして、何か、別儀が。」
「大有り。(と調子が砕けて、)私どもは願う処の御縁であるし、妙にもかれこれは申させません。無論ですね、お前、河野さんの嫁になるんだ。はい、と云うに間違いはありませんが、他にもう一人、貴下からお話し下すって、承知をさせて頂きたいものがあるんです。どうでしょう、その者へ御相談下さるわけに参りましょうか。」
「お易い事で。何でごわりまするか、どちらぞ、御親類ででもおあんなさりまするならば、直ぐにこの足で駈着けましても宜しゅう存じまするで。ええ、御姓名、御住所は何とおっしゃる?」
「住居は飯田町ですが、」
 と云う時、先生の肩がやや聳えた。
「早瀬ですよ。」
「御門生。」と、吃驚する。
「掏摸一件の男です。」と意味ありげに打微笑む。
漢方スタイルクラブカード@ もう一歩踏み出すために

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