土地が狭いだけに反響が早い、為る事成す事直ぐ目に付く。私が編輯の方針を改めてから、間もなく「日報」の評判が急によくなつて来た。
 恁うなると滑稽もので、さらでだに私は編輯局で一番年が若いのに、人一倍大事がられて居たのを、同僚に対して気恥かしい位、社長や理事の態度が変つて来る。それ許りではない、須藤氏が何かの用で二日許り札幌に行つた時、私に銀側時計を買つて来て呉れた。其三日目の日曜に、大川氏の夫人が訪ねて来たといふので吃驚して起きると、「宅に穿かせる積りで仕立さしたけれど、少し短いから。」と云つて、新しい仙台平の袴を態々持つて来て呉れた。
 袴と時計に慢心を起した訳ではないが、人の心といふものは奇妙なもので、私は此頃から、少し宛、現在の境遇を軽蔑する様になつた。朝に目を覚まして、床の中で不取敢新聞を読む。ト、私が来た頃までは、一面と二面がルビ無しの、時としては艶種が二面の下から三面の冒頭へ続いて居る様な新聞だつたのが、今では全紙総ルビ付で、体裁も自分だけでは何処へ出しても恥かしくないと思ふ程だし、殊に三面――田舎の読者は三面だけ読む。

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